
コロナ禍やウクライナ戦争でサプライチェーンが寸断され、半導体だけでなくプラスチックの供給網が混乱したことは製造業の皆さんは記憶に新しいと思います。
2023年10月にパレスチナのガザ地区を実効支配しているハマスがイスラエルをミサイル攻撃することによって、ハマスという集団とイスラエルという国家が戦闘状態に突入しました。その理由や背景はいろいろあるでしょうが、日本企業にとって大きな懸念となるのは、日本が輸入している石油の97%が通過しているホルムズ海峡の安全保障です。もしもホルムズ海峡が封鎖されることになれば、瞬く間に日本の国内備蓄は底をつき、エネルギー危機だけでなく、石油を原料とした各種製品も不足することになるでしょう。
ホルムズ海峡封鎖という緊急性が高い危機がやってこなかったとしても、地球環境の保全のためにもプラスチックを循環型経済に乗せるべく、できるだけ多い種類や量のプラスチックをリサイクルできるのかはサーキュラーエコノミーの実現に取り組む日本国としては避けて通ることができない課題です。
現状では、リサイクル前と用途が同等になる水平リサイクルできるプラスチックの種類は限られていますし、プラごみの多くはサーマルリサイクルがほとんどを占めていますが、熱源として使うサーマルリサイクルではなくプラスチックとして再利用するには、単一素材に戻すことがキーポイントになります。それは、いかに分別し、選別するかという消費者の習慣と選別技術にかかっています。
一般的に、プラスチックの選別には水、飽和食塩水、50%エタノール水溶液といった比重の違う溶液に入れて、浮くか沈むかで分類する「比重選別」が普及していますが、再生されたペレットの品質を高めるためにレーザーフィルタによる選別などの技術が使われるようになってきています。
これまで掘削した原油に頼った製造業が、積極的に再生材を使っていくように変化することは、環境のための行動であるだけでなく、サプライチェーンを有事に強くすることにもつながるのではないでしょうか。