熱分解設備とは熱により物質を分解する装置で、昔からある焼却炉との違いは火炎を伴う燃焼をさせるかさせないかという点になる。火炎を伴う昔からある焼却炉は燃焼後に残る灰や炭を再利用することが難しく、サーキュラーエコノミーには向かない。また、火炎を伴って燃焼するとCO2が大量発生するが、単純焼却炉には抑制対策が施されていないためカーボンニュートラルにも貢献しない。
株式会社大丸製作所(神奈川県相模原市、杉田豊範社長)が開発した「SUPER WASTE PROCESSOR(SWP)」は、火炎を伴わない熱分解装置で、マグネットコアにより磁気を発生させて炭化する装置なので電気を使うが、連続的にごみを投入すれば分解時の発熱で次の分解が進む省エネ設計だ。また、第三者測定機関が発行した計測結果の証明書によるとCO2の排出も国内環境基準を満たした高性能焼却炉の60分の1以下に抑えられるという。また、フタを開けなければ臭いもほとんどしないことは取材でも確認できた。
ラインナップには1日に最大300kgまたは1立米程度の処理でききる「WSP-80(写真)」と最大7立米処理できる「WSP-120」があり、処理能力は含水率やサイズによって変わるため、1~5cm3程度が最適という。分解処理後の残渣は、プラスチックなどの有機物は200~300分の1程度の容量(単純焼却炉の10分の1程度になる)に減量された白いカルシウム粉になりセメント骨材として再利用でき、金属等の無機物はそのまま残るので金属リサイクル事業者に引き渡しができるとのこと。
ただし、実際の稼働となると上記のメリットと引き換えに使い方の制約がある。ひとつは、分解に足りする温度までゆっくり1日かけるため、連続運転できるごみ供給量が運用のカギとなる。不足しないよう他社から引き受けることも考えられるが、その場合は産廃処理の免許が必要になる。また、残渣としての白灰はセメント骨材として利用できるというが、地域によっては引き取り事業者の確保には壁があるという。それと、僅かだとはいうが電磁気を使うため電力は消費する。消費電力分と、一般的な焼却炉よりは遙かに少ないとはいえ排出するCO2も含め、カーボンニュートラルのための相殺案が必要になる。導入価格も単純な焼却炉に比べるとやはり高額だ。
実際に購入した場合にスペックとの違いがあるのか、2022年に購入して運用しているユーザー企業があるので、通年データがそろった時に改めて取材し、レビューに追記したい。