2023年9月19日~25日の各国メディアによると、欧州連合(EU)は、不当商行為指令(UCPD)と消費者権利指令(CRD)を改正し、2026年までに『カーボンニュートラル』との主張を禁止することに合意したと報道されており、これにより2026年からは「EU-ETS(欧州排出量取引制度)」や「CBAM(炭素国境調整メカニズム)」で認証されていないカーボンクレジットを使った「実質ゼロ」はカーボンニュートラル(炭素中立)やクライメイトニュートラル(気候中立)とは認めないことにする計画とのことです。
今はEU圏で販売される商品に限られていますが、いずれ日本にも似た規制が適用されることでしょう。
一方で、厳しいルールを宣言したEUの中にあって、逆行するように石炭火力発電の延命を図る国が現れました。南東欧諸国のニュースサイトSeeNewsによると、ブルガリアは石炭火力発電を2038年まで段階的に減らしていくという従来の方針を撤廃し、火力発電の廃止期限の明示を止めたとのことです。総電力の3割以上を火力発電が占めるブルガリアのエネルギー事情や労働者の反発があり、欧州委員会が推し進める火力発電廃止に同調できなくなったようです。この事情は中東欧諸国に共通の問題であり、チェコ、ポーランド、ルーマニア、スロベニアなども石炭火力への依存度が高いのでブルガリアと同様に国民が反発するおそれがあり、欧州委員会も対応に窮しているようです。
カーボンニュートラルの定義を厳格化しようとする欧州委員会の決定と、加盟国の石炭火力発電延命の動きは相反するものですが、発表が前後していることは無関係ではないと思われます。国連が掲げる2050年のカーボンニュートラル(炭素中立)の目標を中心になって推進してきたのがEUですから、どういうカタチで圏内諸国と摺り合わせていくのか、曖昧なままにするのか、それとも目標を修正するのか、決着に注目が集まっていますが、おそらく2024年の欧州議会選挙が方向性を決めるターニングポイントとなりそうです。
もしかすると、石炭火力発電は延命させつつCO2の排出量をコントロールしようとする方針になるかもしれず、それはまさに世界中から「時代遅れ」とか「化石賞」とか揶揄されながらも現実的な落とし所として日本が進めてきた方策ですから、火力発電を高効率化する日本の技術が注目されることになるかもしれません。特に、既存の火力発電施設に後付け設備でCO2排出量を減らす技術は、EUの方針によっては大きな注目が集まりそうです。