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【熱風発生装置】都市ガスやLPGとの混焼率を0~100%で変えられる水素バーナー

 作業者の安全確保のため、塗料など可燃物のある現場では室内の空気を循環させることができず、外気を温めては捨てる外気導入を繰り返している工場が多い。人が常駐していなくても、たとえば点検のために人が入る可能性のある場所は基本的に外気導入となる。

外気導入は膨大なエネルギーを要するため、電気で瞬時に大量の空気を加温することはコスト的に難しく、多くの工場でプロパンガスや都市ガスを燃やすスコープ1のバーナーが設置されている。しかし、カーボンニュートラルという視点で見ると、ガスバーナーは改善すべきCO2の大きな発生源のひとつとなっている。


 多くの企業でガスの代わりに水素を燃焼させる解決策が検討されているが、現段階では水素の値段がネックになっている。政府は1Nm3(ノルマル立米)あたり現在170円程度という価格を2030年には30円まで下げると発表しているが、それよりも前に設備を更新しなければならない工場はどうするか。一度導入してしまうと10年単位で更新できない可能性もあるので、変化に対応できる柔軟な設備が必要だ。

この課題に対応できる装置として、株式会社ヒートエナジーテック(神奈川県横浜市、村田陽一社長)は「水素」と「水素+都市ガス」および「水素+LPG」の3種類の燃料に対応し、且つ混合率を変化させられる「HET水素混焼式熱風発生装置(DF-40~1600)」を2023年3月23日に発売した。

この装置なら、水素の流通価格を見ながら水素の混合率を変化させていくといった要望に対応が可能だ。発電能力は46~1860kWだ。また、この技術を使った「新JET熱風式加熱乾燥実験炉」も用意されているので、導入前のトライアルもできるという。ただし、まだ発売初号機であり装置自体の価格が高いようだ。中小企業としては大企業の導入実績が積まれることによって価格がこなれるのを待ちたい。


 また、LPGやプロパンガスの代わりに水素を使う代替策には、体積で比べるとLPGやプロパンガス(流通しているのはプロパン95%とブタン5%の混合ガス)に対し水素はエネルギー量が小さいという課題もある。重さで比較するとプロパンは11.9kcal/gで水素は33.9kcal/gで2.8倍のエネルギー量ということになるが、容積で比較すると1Nm3(ノルマル立米)あたり水素3,300kcal/m3に対し、LPGは10,750kcal/m3、プロパンガスなら24,023kcal/m3となり、LPGは水素の3.3倍でプロパンなら7.3倍となる。水素は軽いために同じ重さなら体積が大きいということだが、運搬に使う圧縮ボンベは7m3という容積ベースとなる。もちろん水素は液化すると800分の1(液化プロパンは250分の1)になるがマイナス253℃の低温が必要となるため、中小企業には選びにくい選択肢だ。

ちなみに1kWhは860.4kcalであり、1MJ(メガジュール)は239.006kcalだから、自社の消費電力から換算すると1日の必要量が計算できるだろう。大がかりな設備が不要で中小企業にとって使いやすい圧縮ボンベは1本7m3の容量、それを30本をまとめたカードルで2,700MJ(645,316.2kcal)の熱量(約750kW)だ。


 水素は製造方法によって分類されており、最も普及している化石燃料由来のものはグレー水素と呼ばれ、化石燃料由来だが製造工程において排出されるCO₂を回収・貯蔵することで排出を実質ゼロとみなすものをブルー水素、再生可能エネルギーを使って製造されたものをグリーン水素と呼ぶ。

日本政府が推進するブルー水素がIEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)に認められるかが注目されていたが、1kgの水素製造で排出されるCO₂が7kgを下回ればグリーンとみなすという炭素集約度の指標が2023年4月11日に発表され、国際社会においてブルー水素がグリーン燃料として認められる目処が立った。


 なお、水素といえば爆発の可能性もある危険物だが、株式会社ヒートエナジーテックはガスバーナーの大手である株式会社桂精機製作所の関連会社で、福井国体(2018年)や東京オリンピック(2021年)などの水素燃焼式聖火台も手掛けており、水素燃焼に関する安全確保ノウハウも豊富だ。


HET水素混焼式熱風発生装置(出展:ヒートエナジーテックホームページより)


岩谷産業の水素ボンベ(出展:岩谷産業ホームページより)

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