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【CO₂回収】電気透析技術を使って合成燃料の原料となるCO₂を、大気回収の20倍の濃度で海水から回収


出典:ニュースイッチ by 日刊工業新聞

 ご存知の通り、石油などの化石燃料を燃やすと温室効果ガス(CO₂)が発生するために地球の温暖化が進んでしまうから化石燃料を使うを止めましょうという考え方が今の主流派です。


 この主張に背景には政治的な思惑もありそうですが、ともかく現在の主流は、この考え方をベースに、各国で発電方法の置換や自動車のEV化が急速に進められてきました。しかし、国によっては全てを電化すると発電力が追いつかない等の給電キャパシティ問題もあり、二酸化炭素を新たに発生させるのではない燃料を使うのなら内燃機関(エンジン)でもよいのではないかという妥協案が、EV普及に熱心なEUから出てきました。


 では、二酸化炭素を“新たに”発生させない燃料とはどういうものかといえば、大気や水の中に含まれるCO₂を回収して使うのであれば、もともとあったものなのでプラスマイナスゼロ、新たに発生させたのではないという解釈に則って水素とCO₂を合成してつくる「e-fuel(ガソリンの代替品)」や「e-disel(軽油の代替品)」です。


 「e-fuel」や「e-disel」は地球温暖化に影響しないものとして今後も石油由来の燃料を代替することができるとする妥協案が承認されれば、大気や水に含まれるCO₂を回収する技術、水素を生成する技術、水素とCO₂を合成する技術と、それらを安く安定的に運搬・供給するインフラが重要になってきます。もちろん、ガソリンや軽油を燃焼させることを一足飛びに電化するより現実的な移行策となる可能性が高いので、各国の研究機関や企業がしのぎを削って開発競争しています。


 製造業にとっても「e-fuel」や「e-disel」が安価に手に入ることは重要な事業継続条件になるかもしれませんし、たくさんの日本企業が精力的に取り組んでいます。そのひとつが国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)が中心になって進めているCO₂回収の技術で、以下が2023年10月13日「ニュースイッチ by 日刊工業新聞」に掲載された記事からの引用です。このプロジェクトに期待して、今後の成果に注視していきましょう!


 海洋研究開発機構の吉田弘グループリーダーは清水建設やケミックス(相模原市南区)と共同で、海水から二酸化炭素(CO₂)を回収するシステムを開発した。電気透析で海水を酸性化し、CO₂を放出させる。大気の20倍の濃度のCO₂を得られた。海水に含まれる炭素量は大気の120倍。洋上風力発電と組み合わせ、余剰電力でCO₂を回収するシステムとして提案していく。


 海水中には中性では重炭酸イオン、酸性ではCO₂の形で炭素が含まれる。そこで電気透析で海水を酸性化して重炭酸イオンをCO₂とする。この状態でCO₂を含まないガスと触れると気液平衡でCO₂が放出される。


 電気透析はバイポーラ膜電気透析装置を採用。実験では海水の水素イオン指数(pH)を6・2まで下げると、約8000ppm(0・8%、ppmは100万分の1)のCO₂が放出された。大気のCO₂濃度は約400ppm(0・04%)のため20倍に相当する。CO₂1モル当たり139キロジュールのエネルギー効率で回収できた。




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